公務執行妨害罪に罰金刑導入検討
2005-10-05


公務執行妨害罪への罰金刑の導入を法務省が検討しているようですね(以下の記事はボツネタ経由で知りました。)。

窃盗罪に罰金刑導入、万引きなどに適用検討…法務省:[URL]]]

 法務省は、現行法では懲役刑しか設けられていない窃盗罪などの財産犯について、罰金刑を導入する方針を固めた。

 南野法相が10月の法制審議会(法相の諮問機関)総会で諮問する。法務省は、来年の通常国会に刑法改正案を提出したい考えだ。

 現行の刑法で窃盗罪に対する罰則は「10年以下の懲役」と定められている。被害金額の少ない万引きなど軽微な窃盗では、検察が「懲役刑とするのは、刑が重すぎる」として起訴猶予処分としたり、裁判になっても執行猶予判決となることが多かった。このため、中間的な刑罰を設けることによって、犯罪の軽重に応じた刑事処分を可能にする狙いがある。

 罰金の金額は数十万円程度を想定。罰金刑は簡易裁判所での略式裁判で手続きが行われるため、迅速な事件処理も可能となる。

 窃盗罪のほか、詐欺や横領など財産に対する犯罪や、懲役刑と禁固刑しか設けられていない公務執行妨害罪などでも罰金刑の導入を検討している。

(読売新聞)

公務執行妨害として逮捕,勾留されるものの中には本当に懲役刑や禁固刑を科してもいいのか?という軽微なものがあるのは確かです。ただ,そういう軽微なものはそもそも公務執行妨害の構成要件を満たさないものとして即釈放にすべきもので,そのようなものについて罰金刑として処罰すべきというのは方向が逆ではないでしょうか。

ところで,罰金刑を導入するということは,略式裁判によって刑罰を与えることができるようになるということです。

そうするとどうなるか?えん罪が増えるのではないでしょうか。

「認めれば罰金刑で早く出られるけど,認めないと正式な裁判を請求されてまだまだ拘束される。」という捜査官からの脅しが出てくるのです。今までは,正式な裁判か不起訴による釈放しかなかったので,「認めれば早く出られる。」とはいえませんでした。しかしそれが可能になるのです。

痴漢えん罪事件については上記のような捜査手法がつかわれているとの報告もありますから,これが公務執行妨害に使われないとも限りません。

しかも,公務執行妨害は「転び公妨」などによる市民運動弾圧の手段としても使われるものです。筋金入りの活動家であれば「完全黙秘」で突っぱねるのでまだしも,そこまで筋金入りでないデモ参加者などにとって,罰金払えば出られるというのは虚偽の自白への誘惑として働きかねないような気がします。

上記記事と符丁を合わせるかのように,公務執行妨害が増加、「精強な警察」へ装備強化といった記事も出されました(落合弁護士のブログで知りました。)。

公務執行妨害が増加しているというのは,昔に比べて軽微なものも認知するようになったということなのか,それとも警察に対する信頼の低下の現れなのか。それとも単に世の中が荒んできたことの現れなのでしょうか。

この問題は公務の執行の適正化や,社会政策による生活の安定といったやりかたで対処すべき事柄で,罰金刑を新設して公務執行妨害罪による処罰範囲を広げることとは無関係でしょう。

公務執行妨害罪への罰金刑の導入は慎重に検討すべき事柄であると思います。


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