法テラスは現代のお白州か
2005-10-12


日本司法支援センターの愛称が「法テラス」に決まったようですね。

この名称,4〜6個の愛称案の中から選ばれたものです。 管理人は候補案とその趣旨が記載された紙を同じ事務所の弁護士から見せられ,どの案がいいか聞かれました。いずれの案にもロゴマーク案がついていた記憶があります。「法テラス」のほかにどんなのがあったか思い出せませんが,隣の席に座っている弁護士に聞いたところ「法エール」(鯨がマスコット)というのがあったとのことです。

私は,いずれもパッとしない名前だなと思いつつ,日本語が使われている(テラスも「照らす」と考えれば外来語ではない。)という点から「法テラス」が良いのではないかと回答しましたが,本当にそれに決まったことには驚いています。

まあ,パッとしないのが愛称だけにとどまっているのならまだ許せます。しかしこの司法支援センター,国選弁護に関して弁護人を推薦し,その結果選任された弁護士に国選弁護人の仕事を行わせるという業務を行う組織なのですが,選任された弁護人の弁護活動の独立性などの点で弁護士の多くから懸念が示されており,そのような懸念から司法支援センターとの契約を拒否する弁護士も少なくないようです。

司法支援センターが法務省所管の独立行政法人であり,理事長が法務大臣の任命にかかるといったことからすれば,弁護士が司法支援センターの作成する「業務方法書」や「法律事務取扱規程」(いずれも法務大臣の認可にかかるものです。)によって弁護活動を縛られるのを嫌い契約を拒否するのは自然でしょう。

司法支援センターのウエブサイトには,

 支援センターの主な業務は、以下のとおりです。

とあります。司法支援センター自身,その国選弁護関連業務が,被疑者・被告人に国選弁護を受ける権利を保障することを目的とするものではなく,「裁判の迅速化、裁判員制度の実施」といった刑事司法制度の維持を目的としていることを認めてしまっているのです。これでは,司法支援センターと契約する弁護士は,刑事司法制度のもと迅速な処罰,国民の処罰感情に沿った処罰を被疑者・被告人に科すための介添人に成り下がってしまうのではないでしょうか。

こうした司法支援センターに刑事弁護を任せられないという危機感から,弁護士会で当番弁護,国選弁護を運営していこうという動きも出てきています。

「悩みを抱えている方々にくつろいでいただけるような,さんさんと陽が差し,気持ちの良いテラスのような場所」。司法支援センターの愛称の由来にはそうあります。しかし,刑事被疑者や被告人にとっては,「法テラス」とは,さんさんと陽はさすかもしれないが,自らの主張を十分に聞いてもらえずに灼熱地獄のもと「法の裁き」を受けるお白州を意味する言葉にすぎないのではないでしょうか。

被疑者国選弁護制度の導入と同時に作られた司法支援センターですが,国選弁護を委ねるのには値しない機関のように思います。

[「司法改革」]

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