応報感情に対する,刑罰以外での対応策を真剣に考えるべきではないでしょうか。
「死刑判決ほしかった」母子殺害差し戻しに本村さん(YOMIURI ONLINE(読売新聞))
命をもって罪を償ってほしい――。妻と長女を殺された遺族の悲痛な訴えが、司法を動かした。
犯行時18歳だった被告(25)の無期懲役判決を破棄し、2審に差し戻した20日の最高裁判決。被害者の夫、本村洋さん(30)は「上告が棄却されなかったのはうれしかった」と語る一方、「最高裁自ら死刑という判断を出してほしかった」と、今後も裁判が続くことにやり切れなさものぞかせた。
「残念だというのが正直な気持ちです」
判決後、午後4時から東京・霞が関の司法記者クラブで会見した本村さんは、感情を押し殺すように、淡々と感想を語り始めた。
被害者遺族の方の気持ちとして,命をもって罪を償ってほしいという気持ちを持つのは自然な感情です。しかしそれを,刑事裁判の結着がつくまで持たざるを得ない状況にしておいていいのでしょうか?
死刑判決は,もし間違ってなされ,そのまま執行された場合には取り返しのつかない結果をもたらすものです。したがって,被告人,そして被告人の立場を守るべき弁護人が徹底的に争うのは当然ですし,警察のように調査のための手足を自前では持たない弁護人が争うことになれば,それなりの時間がかかるのもまた必然です。判決も,そのような徹底的な弁護活動が行われたことをふまえて慎重になされるべきものです。ですから,時間がかかるのもやむを得ないことです。(なお,ここでは死刑制度が存置されている現状を前提としています。)
被害者や遺族が早期処罰を望んでいるから手続を簡略化して早期に判断をというのはおかしな議論だと思います。
むしろ,刑事裁判に頼ることなく,被害者の経済的,精神的損害を回復するための措置を考えるべきではないでしょうか。
本判決を含めた最近の重罰化の傾向を見るに,これまでの被害者保護の無策のツケを,量刑における重罰化でごまかそうとしているように思われてなりません。
最高裁、無期懲役の破棄(blog of Dr. Makoto Ibusuki)
セコメントをする