社会奉仕活動の大学入試資格化とNGO
2006-09-19


ちょっと前のニュースですが・・・。

国公立大学の入学時期、9月を検討 安倍官房長官Sankei Web

安倍晋三官房長官は30日、政権構想の柱となる「教育再生」の一環として、国公立大学の入学時期を9月に変更し、高校卒業から大学入学までの間に社会奉仕活動を義務付ける改革案の検討を始めた。安倍氏は子供の学力向上だけでなく、教育を通じたモラルの回復が不可欠だとみて、こうした改革が必要と判断。首相直属で設置する「教育改革推進会議」(仮称)で、具体案を取りまとめる。

社会奉仕活動というのはどのような活動を念頭に置いているのでしょうか?高齢者介護,障碍者介護など福祉の現場が念頭に置かれているのかも知れません。では,国際協力NGOで海外スタッフとして派遣されたりすることは含まれないのでしょうか。また,そのようなNGOで,機関誌発送等の事務作業を手伝う作業を行うことはどうでしょう。

ところで,社会奉仕活動(ボランティア)を行ったことが大学入学資格になるとすると,その活動を行ったことを証明する存在が必要です。一般的には,その活動を行った場所(団体)が証明することになるのでしょう。

ではその証明はどんな団体でも可能なのでしょうか?

大学入学資格の有無を決めるものである以上,どんな団体でも出せるというわけにはいかないということになるでしょう。そうすると次に出てくるのは,大学入学資格を与える社会奉仕活動を行っている団体をどこかが認証するという話になってきます。すると,認証を行う機関を独立行政法人で・・とかいうことになるのではないでしょうか(各大学が認証するという途も考えられますが,大学は併願されることが多い状況を考えると難しいような気もします。)。

では,このような認証機関による認証は,どんな基準で行われるのでしょう。学生があるNGOで働きたい(社会奉仕活動をしたい!)と思っても,そのNGOが政府の政策に反対することの多いNGOであったがために認証を受けられない,ということはないのでしょうか?たとえば,障害者自立支援法の制定に強硬に反対していた障碍者支援団体や,イラクへの自衛隊派遣に反対していた国際協力団体には認証を与えないということにならないでしょうか。政府の施策に反対するか否かで,受験資格を証明できるか否かが決まるという点で,政府(直接には認証機関)によるNGOの選別が行われるということです。

こうした団体からすれば国策遂行のための大学受験者受け入れはごめんだということで,認証を受けられなくても結構ということなのかもしれませんが,受け入れ団体を選ぶ幅が狭まるということで受験生には不幸なことです。

(もっとも,こうした認証の問題などは提案者の脳裏にはなく,単に,無償の労働力を徴用でき,あわよくば社会福祉に関する費用の増大防止に結びつけようということしかないのかもしれません。でも,上記のようなことに考えが及ばないこと自体,社会奉仕は国策に従って当然ということの裏返しで,問題のような気もします。)

社会奉仕活動の義務化は,大学受験者に労役上の,また,経済的な負担をも押しつけるもので忌むべきものですが(この点については飯田先生のブログ(その1その2)で詳細に述べられています。),受け入れ側のNGOの事務負担の増大や,上述したようなNGOの選別に使われる危険性にも目が向けられるように思います。

参考 安倍政権で教育はめちゃくちゃに! おそろしい未来図ろーやーずくらぶ

[NPO]

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