優良誤認の「優良」って?〜日本ヒルトン(株)に対する件から考える
2008-12-16


レストランの出す料理に関する排除命令といえば成形肉ステーキに対する件以来でしょうか・・・。

日本ヒルトン株式会社に対する排除命令について(PDF)

排除命令の前提としている事実の摘示が興味深いものがあります。

2(1) 日本ヒルトンは,平成9年5月ころから平成20年9月ころまでの間,肩書地に所在し同社が運営する「ヒルトン東京」と称するホテル(以下「ヒルトン東京」という。)内で「トゥエンティワン」と称する飲食店(以下「トゥエンティワン」という。)を運営し,同店において一般消費者にフランス料理を提供していた。

(2) 「前沢牛」とも称される「いわて前沢牛」と称する牛(以下「前沢牛」という。)は,岩手県奥州市で肥育された黒毛和種の牛であり,その肉は一般的に高級品として認識されている。

(3) 「オーガニック野菜」と称する野菜(以下「オーガニック野菜」という。)は,一般的に化学的肥料及び農薬を使用しない方法により生産された野菜として認識されており,安全性の高い野菜として一般消費者に好まれる傾向にある。

(4) 北海道産の「ボタンエビ」と称するえび(以下「ボタンエビ」という。)は,外国産のものに比べ,良質なものとして一般消費者に好まれる傾向にある。

「前沢牛」は「一般的に高級品として認識されている」,「オーガニック野菜」は「安全性の高い野菜として一般消費者に好まれる傾向にある」,北海道産の「ボタンエビ」は「良質なものとして一般消費者に好まれる傾向にある」って,実際に高級か,安全性が高いか,良質かということとは関係なく,消費者がそのような認識をもっているから,そのような認識の対象物であるかのような虚偽の表示をすることが優良誤認とされているのです。

つまり,ここでいう優良誤認の優良とは,一般に優れたものとして考えられているものということであり,一般消費者の好みを基準として判断されるもの(検査や実験などによる評価の結果ではない。)ということです。

消費者保護という観点から言えば,上記のような消費者の好みが保護に値するものかどうかということがもう少し厳密に問われてよさそうな気もしますが,その点が問われず,ただ消費者の選好に影響を与えるという点で優良誤認か否かが決まるのは,景品表示法が独占禁止法の特別法であるからではないでしょうか。消費者の選好に影響を与える以上競争に影響を与えているという点で,規制の対象とすべきと考えられているのです。

しかし,こうした表示に対して排除命令が下されるのを見ると,産地表示に対する選好の高さ,地域ブランドを作り上げる意味の大きさを強く感じます。そのような選好をするのが本当に賢い消費者なのかというのは議論されるべきようにも思いますが。

[景品表示法]

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