司法修習発展的解消論?閣議決定・約束違反?
2010-09-13


先週の土曜日,弁護士会で,司法シンポジウムなるものが開かれたようだ。

そこでは,新司法試験合格者による,司法修習発展的解消論なるものが唱えられた模様。要は,法科大学院を法曹養成の中核とする考え方を推し進めれば司法修習は不要となるというもの。司法修習がなくなれば,貸与制とか給与制とかいう問題もなくなるということらしい。

この発言者とおぼしき人のつぶやきとか見ると,法曹になるまでの拘束期間が長いことを問題にしているようだった。

でも,修習による1年間の拘束よりもずっと長い拘束が法科大学院によってかけられていることの方が問題だと思うんだけど,いかがなもんなんだろう?

それにこの人,今までの点による選抜が問題だったことは明らかというような論調でつぶやいているようなのだが,一発勝負での選抜がプロセスによる選抜よりよいという具体的根拠が明らかでないし,一発勝負で,そこまでの過程が問われない方が,より多様なルートから法曹になる人が輩出されることは明らかなんじゃないのかな。いわゆる三振制もなかったんだし。

私自身,現在の司法修習が優れたものかどうかについては,修習期間が1年半になって初年度の統制下の修習を経験したこともあって,かなり疑問視しているし,法曹養成について,現時点で貸与制か給与制かだけを取り上げて論ずることは反対だけど,司法修習をなくせば解決なんていう考え方には到底賛成できない。

あと,司法試験合格者3000人が達成されなかったことについて,閣議決定に反する,約束違反だという意見を最近ネット界隈で目にした。また,私の属する第二東京弁護士会の某派閥のニュースレターでも,公約違反とのトップ記事があった。

しかしこの点については前回の記事でも触れたけど,合格人数についてはしっかり前提条件というか留保がついているんだよね。

合格者数や合格率については,新司法試験初年度に,7〜8割合格しないことについての文句の声も目にしたけど,7〜8割というのは法科大学院の努力目標にすぎないのであり,7〜8割というのが合格率の保障でないことは司法制度改革審議会意見書を読めば分かることなんだよね。

司法制度改革推進計画にしても,司法制度改革審議会意見書にしても,権力側が作った文書なわけで,その解釈については権力側が行うことになっている。それだけに,書面上の記載については後に権力側によってどのような解釈がされるおそれがあるのか,綿密に点検する必要があるのではなかろうか。

それをきちんと検討せずにか,検討して分かっているけど故意にかは知らないけど,約束違反だって騒ぐのはどうかと思う。

まあ,自分が権力側に自分がイヤなことをやられたら騒ぐだろうから,今回騒いでいる人は上記のことが分かってやっているんだろうけどね,というか,弁護士やそれになろうという人である以上,それくらい分かってやっているものと信じたい。

最近の「司法改革」をめぐる一連の動きを見ていると,「司法改革」を推進している人たちって,綿密にものごとを見聞き考えているわけではないんだなって感を強くさせられる。

私も,そんなこと今更気づいたのか,って言われそうだけれども。

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