裁判員裁判、少年に初の死刑判決 石巻3人殺傷
2010-11-25


1件出て,足かせが取れたのでしょうか。

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宮城県石巻市で今年2月に男女3人が殺傷された事件の裁判員裁判で、仙台地裁(鈴木信行裁判長)は25日、殺人罪などに問われた同市の無職少年(19)に求刑通り死刑判決を言い渡した。裁判員裁判での死刑判決は2例目で、少年に対しては初めて。

検察側は論告で、少年の犯行を「非人間的で残虐で冷酷極まりない」と厳しく非難。保護観察処分中の犯行だったことから「犯罪性向は根深く、更生は期待できない」との見解を示し、山口県光市の母子殺害事件と比べても「同様あるいはそれ以上に悪質といえる」と主張していた。

求刑と同内容の宣告刑なのですから,裁判体も検察官と同意見だったということなのでしょう。

犯したとされる罪は重大とはいえ,19歳の段階で「犯罪性向は根深く、更生は期待できない」と決めつけられ,命を奪われる社会って,他の一般市民にとっても,果たして生きやすい,いい社会と言えるのでしょうか。何か日本全体を覆う「再起制限社会」の雰囲気がこの裁判にも現れたように思えます。

この裁判では被害者参加がなされ,遺族や遺族の代理人弁護士から極刑=死刑を求める意見が出されたようですね。(元交際相手の姉ら3人殺傷、19歳少年に死刑求刑(asahi.com))

被害者参加制度自体の是非はとりあえず措いても,極刑を望む遺族の声を前にして,それに反する意見を裁判員がどれだけ主張できるのか。本件のように従前の基準からしても死刑になる可能性のある事件については,遺族の意見に流される裁判員が多くなるのではないでしょうか(この点は職業裁判官も最近は同様な傾向を持っているような感を受けますが)。裁判員裁判については,それを続けるにしても(私は廃止論者ですが),被害者参加制度の適用は排除すべきように思います。

裁判員制度については,死刑判決は従来に比べ減るのではないかと言われてきましたが,タイミングの問題もあるかもしれないとは言え,10日も経たないうちに2件出されたことで,今後は立て続けに出てくることも予想されます。

まあ,裁判員裁判については,もともと被告人のための制度ではないことは,司法制度改革審議会も述べているとおりですが,結果としても被告人のためにならないことが明らかになってきたというべきなのではないでしょうか。日弁連は,本件判決に際してもコメントを出していますが,現状を踏まえて,単に評決のあり方にとどまらず,裁判員制度自体の廃止(そこまでいかなくても,廃止を含めた根本的見直し)に言及すべきでしょう。

[「司法改革」]

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